王獣様PRESENTS
匂いフェチ官能小説
第4弾
【 姉の匂い 】
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第4章


「そんなに似ているの?お姉さんと私」

「うん、最初見た時、
姉ちゃんが生き返ったって本気で思ったよ、
……そうだ、この写真」

 翔太は今まで誰にも見せた事が無かった写真を
生徒手帳から出して由紀に見せた。

「十八歳の時の写真だから年齢も一緒だし」

「嘘っ、凄く似てる、
これ私の写真だって私の友達に見せても
誰も疑わないよ」

「ねっ、だから俺も驚いてさ……」

「だから急に……
最初はびっくりしたけどこれで納得した」

 最初は死んだ人に似てると言うと
気持ち悪がられるかと思ったが
由紀は全くそんな風では無く
むしろ興味をもったようだった。

 翔太はまだ話し足りなかったが
これ以上はお互い遅刻してしまうと思った時

「まだ色々お姉さんの話聞きたいけど…
遅刻しちゃうから、
もし良かったら連絡先交換したいな」

と自分が言おうとした事を先に言われ
翔太は喜んで携帯番号を交換した。
 別れ際

「今度会う時、
別の写真を持ってくるから見てくれる?」

と言うと由紀は

「うん、楽しみ、じゃあまたね」

 そう言って笑顔で手を振りながら走っていった。



 その日翔太ははずっと由紀の事ばかり
考えてしまった。

 そしてその日の夜、
翔太はとても悩んでいた。

(今日出会ったばかりなのに
いきなり今日電話するのはなぁ、
でも由紀ちゃんともう一度話さないと
朝の事が何か夢の中の出来事だったような気が…
どうしよう…)

 結局一時間位迷って、
我慢出来ずに電話する事にした。

 もし迷惑そうだったら
すぐに電話を切ろうと決めて。



「もしもし」

「あっ、もしもし、
起きてた?今時間大丈夫?」

「うん、今お風呂出たとこ、
もう今日は電話無いかって諦めてた」

 その言葉に翔太は完全に舞い上がった。

「えっ?諦めてたって事は
電話待ってくれてたって事?」

「えっ?別に待ってたっていうか……
ただ電話くるかなって…」

「実は俺さっきまでずっと悩んでたんだ、
いきなり知り合った日に
電話するのもどうかなって」

「いいよ、
私から番号交換しようって言ったんだから、
いつでも大丈夫だよ」

「そっかぁ、良かった電話して……」

 それから何時間も話題が途切れる事も無く、
気付けば日付が変わるまで話し続けた。
 しかも最後に由紀の方から

「ねぇ、もし良かったら明日から三十分早く
電車に乗って今朝の駅で一緒に話したいな」

と提案してきた。

 翔太は勿論喜んで約束した。
そして二人は次の日から毎日、
駅で待ち合わせをして時間ギリギリまで話をした。

  そしていつしか
お互い名前で呼び合うようにまでなった。



 ある日曜日、翔太は初めて休日に
本格的なデートをする事になった。

 昼からの待ち合わせだったが
翔太は朝早く起きた。

 今までも毎日、
結衣と母には線香をあげていたが
この日は特に気持ちを引き締め
仏壇の前に座った。


「姉ちゃん、
俺由紀ちゃんって子と知り合ったんだ、
彼女姉ちゃんにそっくりで、
初めて見た時は姉ちゃんが生き返ったって
本気で思ったよ、

それで最初は昔みたいに姉ちゃんと
一緒にいるような気がしてさ、

でも色々話してるうちに
やっぱり姉ちゃんとは違う所があって、
それでも俺、彼女を一人の女の子として
好きになったんだ、

姉ちゃんがいなくなって
まだ数年しか経ってないのに、
そんな俺の事どう思う?

あんなに姉ちゃんの事愛してたのに、
いくら顔が似てるからって
別の子を好きになるなんて
俺の事軽蔑するかな……」


 いつしか翔太の目からは涙が溢れていた。


「でも本気で彼女の事が大好きなんだ、
だから今日彼女に正式に付き合ってくれって
言うつもりなんだ、ごめん、姉ちゃん」


 そう言って立ち上がり
仏壇のある部屋から出ようとしたその瞬間

「翔太、頑張ってね」

と結衣の声が翔太の脳に直接響くように聞こえた。
翔太は驚き振り向いたが
それ以上は何も聞こえなかった。

 しばらく仏壇を見ていた翔太は最高の笑顔で

「うん、ありがとう、じゃあ行ってくるね」

 そう言って部屋を出た。
そして玄関を出る時、また後ろの方から

「やっぱり翔太は笑顔が一番だよ」

と聞こえたような気がして翔太はもう一度

「ありがとう」

 そう言って家を出た。



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