アンジェリークPRESENTS
匂いフェチ官能小説
第2弾
【 工場娘の匂い 】
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工場前、四時五十分。
地味な格好をした労働者達が
ゾロゾロと工場の裏門から出て来た。
全体的に、黒、茶、グレーの集団のその表情は、
まるで強制労働を終えた囚人のように貪よりと暗い。
たまに場違いな金髪少年や茶髪少女も交じっているが、
しかしいくら髪を染めようとも
その薄暗い表情は隠しきれていなかった。
その町は、
わずか人口六万足らずのちっぽけな町だった。
すぐ隣町は漁業で栄える港町だったが、
しかしこの町は海にも面しておらず、
産業もなければ観光もないという、
まるで陸の孤島のような寂れた町だった。
そんな、虫の息だった陸の孤島がトドメを刺された。
隣町との境に巨大なショッピングモールが出来たからだ。
その外資系のショッピングモールの登場により、
その町の唯一の商店街が
たちまちシャッター通りと化すと、
町に灯るネオンは
レンタルDVDショップとパチンコ店と
ラブホテルだけになってしまい、
あとは二十四時間フル稼働している
工場とコンビニだけが寒々と輝いているだけだった。
そんな町の人々は、
ただただひたすらに
生きる為だけを目的としているだけのような
質素な生活をしていた。
娯楽と言えば、
酒かDVDかパチンコか不倫くらいで
他には何もすることがない。
当然の如く、
若者達はそんな町から次々に去って行った。
マクドナルドが一店もないこの町で、
一生を終えて行くというのは、
今の若者達にとっては
あまりにも残酷過ぎるのだ。
しかし、そうやって簡単に町を捨てられる
若者達ばかりではなかった。
この町には、
家庭の事情から町を出られない若者も多く、
そんな若者達は高校を卒業すると同時に、
駅裏に群れをなす巨大な工場へと
働きに行くしかなかったのだった。
そこが金石の狙いだった。
過疎化した田舎の工場で、
何の楽しみもないままただただ毎日
ひたすらベルトコンベアーに向かっている地味な若い女たち。
そんな女達ならば、
多少の金やちっぽけな娯楽で
簡単に落ちるだろうと予想した金石は、
片っ端から田舎女を誘いまくり、
そして予想通りすんなりと目的を告げていた。
当然、金石はそんな女達に
クオリティーは求めていなかった。
いや、この場合、逆に綺麗だったり
垢抜けていたりされては困るのだ。
そう、金石がそこに求めているのは
垢抜けない田舎女なのだ。
化粧気もなく汚れた作業服を身に纏いながらも、
しかし、その胸の奥には
貪欲を極めた性欲を
密かに隠し持っている
そんな田舎女を金石は求めているのである。
そんな田舎女達の心理を巧みに操る金石は、
寂れた田舎町の
垢抜けない田舎女達を
次々と開発していった。
この町に3日滞在している金石は、
既に三人の女と関係していた。
三人ともいずれも工場で働く女だ。
ひとりはプラスチック工場で働く
23才の小柄な女で、
コンビニで声を掛けたら
すぐに車に乗って来た。
もうひとりは製紙工場で働く43才の人妻。
夜勤明けの朝方を狙って声を掛け、
1万円であっさり股を開いた。
そして昨夜の女は、
同じ製紙工場で働く30才の独身女で、
見た目は普通の大人しそうな女だったが、
しかしベッドに入るなりいきなり変身し、
1時間もペニスをしゃぶり続けたのには
さすがの金石も驚いた。
そんな、この町の女たちの、
貪欲な性欲が解き放たれた時に見せる
その獣のようなセックスに
どっぷりとハマってしまった金石は、
3日の滞在予定を
もう1日延ばす事にした。
そしていつものように工場地帯を徘徊し、
巨大な電子部品工場を見つけると、
そこの裏門前の埃だらけの
バス停に車を止めたのだった。
金石は、車の中で携帯を弄るフリをしながら、
歩道を歩く労働者達を静かに物色していた。
この工場の労働は簡単な手先仕事なのか、
全体的に女性が多く妙に若者が少なかった。
仕事が楽な分、
給料も安いだろうと睨んだ金石は、
この工場の女達なら1万円も出せば
かなりの変態セックスが楽しめるだろうと予想したが、
しかし、この2日間、
年増の女ばかりを喰って来た金石は、
さすがにあのおばさんたちの
ブヨブヨに弛んだ贅肉にうんざりきていた。
ここはババアばかりだな・・・・
そう思って別の工場へと
移動しようとしたその時、
ふいに金石の車の横を
若い女が通り過ぎて行った。
その女、
いや、その女の子を見た
金石のアンテナが急激に働いた。
金石は、歩道に溢れる労働者達の中で、
その女の子の後ろ姿を
しっかりと目に焼き付けると、
ゆっくりと車を発進させたのだった。
灰色の労働者達とその女の子は
、巨大な産業道路の端にある埃だらけの歩道を、
ゾロゾロと駅に向かって歩いていた。
駅に先回りした金石は、
鉄道員(ぽっぽや)の映画のセットで使われていたような
古びた駅の前に車を止め、
素早く車から降りると
わざとらしく市内地図の看板を見つめていた。
駅の裏手から、
茶色い線路を次々に渡ってくる労働者の群れが見えた。
その群れ約三十人。
彼らのその姿はまるで
アウシュビッツを彷彿とさせる。
それまで集団行動していた労働者の群れは、
駅にやって来るなり方々へと散らばった。
どうやらこの駅の電車は少ないらしく、
彼らは電車が来るまでの間は
プライベートな時間を過ごすらしい。
駅のベンチはおばさん達が占領した。
その他の暗い顔をした女達も
それぞれ所定の待合い場所があるらしく、
馴れた感じで迷う事なく所々へ腰を下ろすと、
バッグから単行本など取り出しては
読み始めたりしていた。
例の女の子は、
駅から少し離れた場所にある駐輪場の隅で、
ひとりポツンと携帯電話を開いていた。
チャンスだった。
そこならば、お節介なおばさん労働者達に邪魔される事なく
彼女をゆっくり口説ける。
そう思った金石は、
目立たないよう
ジワリジワリと駐輪場に足を向けたのであった。
「こんにちは」
金石がそう話し掛けると、
女の子は携帯に顔を向けたまま
目玉だけをジロッと金石に向けた。
金石は女の子のその真っ白に輝く目を
素直に可愛いと思った。
「この町に出張で来てるんだけど・・・
どこか魚料理のおいしいお店、
教えてくれないかなぁ・・・」
金石はそう言いながら、
駐輪場のコンクリート床に座っていた女の子の目の前に
いきなりスッとしゃがみ込んだ。
これが都内の若者だったら
「っせぇな、あっち行けよ!」
と途端に追い払われるところだが、
しかし田舎女には内気な性格の者が多いため、
彼女達を誘う時には
少々強引なくらいのほうがいいという事を、
金石は経験上よく知っていた。
そんな積極的な金石に、女の子は
「わかんない・・・」
っと呟くと、
金石を無視するかのように、
視線をソッと携帯に戻した。
そんな女の子を、
金石はソッと見下ろしながら品定めをした。
手の平にすっぽり入ってしまうような
その小顔はかなりの美形だった。
ほとんど化粧をしていないと思われるその素顔には、
眉毛を細く剃った端に、
かろうじて眉墨だけが細く書き足されている程度だ。
ほんのりと栗毛色に染められた長い髪は
ポニーテールに縛られ、
健康そうな白いうなじが艶っぽく伸びていた。
そのうなじの下は、
残念ながら黒いジャンパーで覆われ、
その胸を確認する事はできないが、
しかし、ピタピタのジーンズを履いたその足はカモシカのように細く、
駐輪場のコンクリート床に体育座りしているその尻は、
大きくもなく小さくもなく、
ただひたすらに丸みを帯びていた。
そんな丸い尻を眺めながら、
いったいどんなパンティーに包まれているのだろうと
金石がゴクリと唾を飲み込むと、
ふいにその大きな目がジロッと金石を見つめ、
女の子は「なんですか?」と怪訝そうな表情をした。
「ねぇ・・・夕食付き合ってくれないかなぁ・・・
キミが食べたいもの、
なんでも御馳走するから・・・」
「・・・いいです・・・」
女の子は冷たくそう答えると、
尻の下の砂利をジリジリっと
音立てながら立ち上がろうとした。
金石は素早くポケットの中から1万円を取り出した。
「夕食を付き合ってくれるだけでいいんだよ、
ね、ただ黙って僕と一緒に
座っててくれるだけでいいからさ・・・」
そう言いながら
金石が女の子の小さな手に1万円札を握らせると、
女の子は戸惑った表情で
「でも・・・」
っと呟きながら駅に振り返った。
駅の周囲には、
まるで満州からの引揚者のような
暗い顔した労働者達が貪よりと座っていた。
女の子はそんな仲間達を
困った表情で見つめながらも、
しかし、その場から立ち去ろうとはしなかったのだった。